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森林環境教育・森林ESD

1. 森林ESDとは

2016(平成28)年5月24日に閣議決定された「森林・林業基本計画」において、「森林環境教育等の充実」の項で、ESDの視点を考慮しつつ、教育関係者等と連携して、森林環境教育等を充実することとされました。

国土緑化推進機構では、文部科学省による「学習指導要領」改訂などを踏まえ、森林・里山を活用したESDを「森林ESD」(持続可能な社会づくりに向け、問題解決に必要な能力・態度を身につけさせるため、森林・里山を活用した人材育成システム)として取組を促進しています。

「森林ESD」の基本的な考え方や事例等については、「特集 これからの学校教育と森林ESD」(国土緑化推進機構 機関紙「ぐりーん・もあ(vol.792017秋)」)および「説明資料」や、森林ESDガイドブック『企業・NPOと学校・地域をつなぐ森林ESDの促進に向けて~基礎編・事例編~』をご覧ください。

森林ESDガイドブックは、林野庁等が推進する森林づくり推進国民運動「フォレスト・サポーターズ」(運営事務局:国土緑化推進機構・美しい森林づくり全国推進会議)に、法人・団体登録していただくと、「登録特典ページ」より無料でダウンロードできます。
登録無料。登録はこちら この機会にご登録ください。詳しくはメールでお問い合わせください。)

2. 森林ESDの進め方

国土緑化推進機構では、森林ESDを推進する上で押さえておくべきポイントとして、以下の4つを掲げています。


1.森林分野と教育分野の双方の視線を併せ持っていること

森林・林業関係者が行ってきた森林環境教育は、社会的課題の一テーマとして森林・林業・木材産業等を取り扱ってきました。これから行う森林ESDは、これに加えて、各教科・学年・単元で扱うべき内容と、育むべく資質・能力を理解した上で行うことが重要です。そのことが学校への教育支援活動を実施することにもつながります。


2.アクティブ・ラーニングを考慮していること

森林ESDは、今般の学習指導要領等の改訂において重視されている「アクティブ・ラーニング」(主体的・対話的で深い学び)を、森林を活用して実践するするということです。

具体的には、

  • 森林の中で学ぶ(learn in the forest)―体験学習
  • 森林について学ぶ(learn about the forest)―調べ学習、相互学習
  • 森林のために学ぶ(learn for the forest)―問題解決学習、発見学習

を組み合わせて展開することを呼びかけています。


3.教科の境を超えて横断的・体系的に学べること

今般の学習指導要領等の改訂においては、「カリキュラム・マネジメント」の観点から、教科横断的な取組を促進することとされています。森林を活用した学びは様々な教科に対応(応用)させることができます。多様な教科等における学びを横断的・体系的に結びつけることが重要です。


4.学校と地域が協働して展開される学びであること

文部科学省は、学校の中だけの学びではなく、NPOや企業等をはじめとした地域の人々や団体の参画を得て、多様な学習・体験・まちづくり等の活動(地域学校協働活動)を促進することとしています。
「森林NPO・ボランティア団体」や「企業の森」、「森林総合利用施設」等が学校等と連携・協働して、森林を活用した「地域学校協働活動」を促進していくことが必要です。


森林の中で(in)
森林について(about)

森林のために(for)

3. これから求められる「森林ESD」

「森林ESD」では、森林分野の視点だけでなく教育分野の視点をも考慮して、体験学習・調べ学習・問題解決型学習等を通して、子どもたちの多様な資質・能力を育むことも意図して、実践することが必要です。

4. 学校教育との連携・信頼関係を築くことが必要です

森林ESDの推進に当たっては、学校関係者との間で理念や方向性のみならず具体的なプログラムの実施に当たっての連携や協力、そして学校との信頼関係の構築が必要不可欠です。
そのうえで、学習指導要領に掲げられている「生きる力」(確かな学力、豊かな人間性、健康・体力)、特に「学力の3要素」(別図参照)の習得に取り組むことが重要です。森林は、これらを育むための多様な活動に対応できることから、学校教育プログラムとして有効なツールになるものと考えます。

別図

現行の学習指導要領の考え方~学力の産大要素①基礎的な知識および技能②習得した知識や技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他能力③主体的に学習に取り組む態度

5. どのような森林ESDプログラムが行われていますか?

森林ESDの視点から行われているプログラムは、まだ始まったばかりですが、企業やNPOが中心となって、教育関係者との連携協力を図りつつ進められているプログラムを紹介すると別紙2のようなものが挙げられます(引用資料「企業・NPOと学校・地域をつなぐ森林ESDの促進に向けて~基礎篇・事例編~」

6. 国民参加の森林づくりと森林ESD

森林ESDの推進に当たっては、教育関係者を含む幅広い分野と人々との間で、森づくりの担い手となる子ども達のための具体的なプログラムの実施について連携協力することが大切です。
国土緑化推進機構では、このような取り組みを重ねることにより「森のために(for)」森林や林業等を取り巻く様々な課題が達成され、ひいては「国民参加の森林づくり」の実現につながるものと考えています。
2017(平成29)年度からは、森林ESDについての取り組みを強化するため「緑と水の森林ファンド」公募事業において、重点項目として「森林ESDの推進」(森のようちえんを含む)を掲げて、森林ESDの視点から個別の教育機関とNPO等が連携・協働した取組を、より多くの教育機関等との連携・協働に横展開をしていくようなモデル的な取組や、都道府県レベルの推進体制の構築に向けた取組を支援することとしています。

参考リンク

参考資料

林野行政による森林・林業分野における教育活動の変遷

別紙1

年代 教育活動 目的や特徴
1949年~ 学校植林
(学校林)
国土緑化運動、学校財産形成、勤労奉仕 (1999 年以降は森林環境教育に類似した取組として促進)
1969年~ 緑の少年団 国土緑化運動、青少年育成
1989年~ 森林・林業教育 森林・林業の普及啓発、後継者育成 (1977年学習指導要領改訂で林業の記述が消滅、1982 年解説書補訂、 1989年改訂における復活を経て本格化)
1999年~ 森林環境教育 森林総合利用・体験学習・総合学習の促進 (後に、森林・林業教育を含む取組として呼称)
2006年~ 木育 木材利用の普及啓発
(現在のところ、森林環境教育の範疇に含めずに運用)

企業・NPO等と学校が連携した森林ESDの取り組み事例

別紙2

タイプ 取り組み名 実施者 概要
出前型 小中高生の森林学習を支援する取組 (公社)かながわトラストみどり財団
  • 森林活動プログラム集「森へ行こう」を作成し県内全ての小中学に配布。
  • 県内緑小学校での間伐体験学習会の開催等
小中学校出前講座の開催 しまね森づくりコミッション
  • みどりの少年団(〇〇参照)に加盟している小中学校を対象として講義と体験メニューを組み合わせた出前講座を開催
  • 講師には、森の名手・名人(〇〇参考)に依頼。
小学校への出前授業・野外授業 (特)穂の国森づくりの会
  • 市内の小学校において、教科に合わせた出前授業及び野外授業を実施。
受入型 森林環境学習「やまのこ」事業 滋賀県琵琶湖環境部 森林政策課
  • 小学4年生を対象とした森林環境学習を「やまのこ」事業として教育課程に位置づけて実施。
「多摩市民の森」を活用した体験林業プログラム 多摩市立八ヶ岳少年自然の家
  • 多摩市の全小学校が、国有林を活用した体験林業プログラムを実施。
「トヨタの森」地域の小学校と連携した環境学習の取組み トヨタ自動車(株)社会貢献推進部総括室 環境・社会活動グループ
  • トヨタの森において、小学校を単位として「環境学習」を実施。年間7千名ほどの小学生を受入れ。
教科横断型・問題解決型プログラム 総合的な学習の時間の支援「わたしと雑木林」 森林総合研究所 多摩森林科学園
  • 市内の小学校5年生の総合的な学習の時間において、16年間にわたり、テーマを定め、系統的・持続的に学習支援。
小学校で森林計画の討論型プログラムを実施 東京農工大学農学部
  • 近隣小学校において、3年生から6年生を対象とし、総合学習を含む教科に応じた体験型・参加型の森林環境教育プログラムを実施。
個別対応型 企業との協働による森林環境教育と「ぎふ木育」 岐阜県林政部 恵みの森づくり推進課
  • 「ぎふ木育30年ビジョン」に基づき、保育園や幼稚園小学校、子育て支援センターなど90施設で、身近な森や公園の中で、樹にふれたり森の恵を活用したものづくりなどを実施。
緑の学校 (特)地球緑化センター
  • 紙芝居を活用した出前授業を契機として、読み聞かせを行う「エコ語り部チーム」の育成や森をテーマとした紙芝居等の募集などを展開。

出典:企業・NPOと学校地域をつなぐ森林ESDの促進に向けて~基礎篇・事例編~(参照)より

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