- 日本は古来より生活のあらゆる場面で木を使い、木に親しんできました。それは自然との共生であり、暮らしの有り様や衣食住と一体化したものであり、必然的なものであったに違いありません。
- こうした「木の文化」に焦点を当て、昨今、急増するインバウンド(来日観光客)への「木のおもてなし」につなげるとともに、木を使った建築や製品、サービス、体験の価値を向上させることで、観光需要の創出はもちろん、地域材利用を促進し、地方創生を図っていくことが期待されています。
- そのため、(公社)国土緑化推進機構と(株)ユニバーサルデザイン総合研究所は、平成30年度林野庁補助事業により、「木の文化」を活かした「木のおもてなし」を促進するための基本的な考え方や視点、展開モデル、参考事例を紹介した「ガイドブック」を制作するとともに、モデル的な「コンセプト映像」、検討委員の「特別インタビュー映像」を制作しました。
- 世界から日本が注目される2020年に向けて、全国各地で「木の文化」を活かした「木のおもてなし」が拡がっていくことを願っています。
「木の文化・木のおもてなし」ガイドブック
○目次
・「木の文化・木のおもてなし」がめざすもの ー3ー
・「木のおもてなし」に活かす日本の「木の文化」の定義 ー3ー
・「木の文化・木のおもてなし」の視点 ー4ー
・私が考える「木の文化・木のおもてなし」
涌井雅之/隈研吾/水戸岡鋭治/デービッド・アトキンソン/赤松明/戸村亜紀 ー6ー
・「木のおもてなし」の提案 ー8ー
・「木の文化・木のおもてなし」事例のご紹介 ー9ー
① 秋田 ~秋田杉と技、そのいにしえと今を味わう ー10ー
② 北海道オホーツク地域 ~クラフト文化を巡る ー12ー
③ 木工のまち・大川と美しい列車の旅 ~300年の歴史とともに郷土に親しむ ー14ー
④ 新潟・上越 ~雪国で暮らす知恵は、思いやりと優しさの証 ー16ー
⑤ 富士山 ~荒ぶる自然と信仰、木とともに生きる旅 ー18ー
⑥ 高山・飛騨 ~木の文化をたどって歩く、歴史と技の楽しみかた ー20ー
⑦ 熊野古道・伊勢路 ~巡礼と尾鷲ヒノキを辿る現代の旅人 ー22ー
⑧ 高知県梼原町 ~雲の上の町で森と出逢う ー24ー
⑨ 吉野・堺・灘 ~桶樽と日本酒の物語 ー26ー
⑩ 長野・軽井沢 ~懐かしくて、新しい、木と森が迎える国内有数のリゾート ー28ー
⑪ ブナの森とヒバの森 ~癒しと健康、五感への贈り物 ー30ー
⑫ 地域のアンテナショップが伝える木のおもてなし ー32ー
○以下よりPDF版のダウンロードが行えます。
・「木の文化・木のおもてなし」ガイドブック 全体版 (5.3MB)
※ファイルサイズが大きいため、分割版も以下よりダウンロード可能です。
・「分割版 表紙~P.8」 (1.5MB)
・「分割版 事例のご紹介①~④」 (1.8MB)
・「分割版 事例のご紹介⑤~⑧」 (1.6MB)
・「分割版 事例のご紹介⑨~⑫・奧付・裏表紙」 (1.6MB)
「木の文化・木のおもてなし」事例のご紹介映像
1 秋田 ~秋田杉と技、そのいにしえと今を味わう
天然秋田杉は秋田県の米代川流域を主産地として成育し、能代市を中心に一大木材産業を築いてきました。1590年には豊臣秀吉が、秋田地方の領主であった秋田実季らに命じて造船や伏見城建築のために秋田杉材を献上させたため、秋田杉は全国的に有名になったと言われています。新旧の美しくも荘厳な建築物から、現代・秋田の玄関口、そして技を極めた木使いの品まで、この地に根付く木の文化はその伝統を活かしつつ、常に新しいおもてなしの心を追求しています。
★English subtitles version here
Akita: Akita Cedar and the Skill, Taste the Tradition and the Present
2 富士山 ~荒ぶる自然と信仰、木とともに生きる旅
富士山は日本を代表する観光地ですが、いくたびもの噴火により神の住む山として畏れられ、崇められてきた歴史もあります。今では海外からの来訪者が多数訪れ、富士山を堪能できる施設や製品、サービスがあります。富士山麓に広がる森林は、富士山信仰や人々の生業と深く関係してきました。伝統的建築物や民家に木材が使われてきたほか、富士ひのきはブランド材として新たな活用が広がっています。さらに木と森を通じて、日本の良さや自然への親しみを伝えようとする取組も増えています。富士山という日本のシンボルを、木の文化という文脈でたどってみるとこの地の新しい楽しみ方が見えてきます。
★English subtitles version here
Mount Fuji: Rough Nature and Faith, a Journey to Live with Trees
3 吉野・堺・灘 ~桶樽と日本酒の物語
蔵のある奈良県吉野郡は昔から林業の盛んな地域でした。蔵の横を流れる吉野川上流にある川上村は、室町時代から500年の植林の歴史を持つ林業地域で、桶の部材である「樽丸」の産地として発展してきました。樽丸は吉野川を筏で下り、海に出てから西宮・堺へと運ばれ、樽は西宮で、桶は堺で作られ、名醸地の灘に運ばれ酒造りに使われ、その技術は今も受け継がれています。地域をまたぎ、森から木材、樽丸から桶樽、そして酒造り、それを供する店まで、物語は続きます。
★English subtitles version here
Yoshino,Sakai,Nada: The Story of Barrels/Tubs and Japanese Sake
「木の文化・木のおもてなし」検討委員メッセージ
本事業の検討委員を務めた有識者の方々にそれぞれのご専門の立場から、「木の文化・木のおもてなし」をどう考えるべきか、どう活かしていくかについてメッセージをいただきました。
涌 井 雅 之 氏
東京都市立大学特別教授、
岐阜県立森林文化アカデミー学長。
造園、ランドスケープアーキテクトとして「景観十年、景観百年、景観千年」と唱え、人と自然の空間的共存をテーマに多くの作品や計画に携わっている。
隈 研 吾 氏
建築家、東京大学教授。
その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案、国内外で実績多数。新国立競技場に47都道府県の木を使うなど、木の建築を多く手がける。
水 戸 岡 鋭 治 氏
工業デザイナー。
建築・鉄道車両・グラフィックなどさまざまなジャンルのデザインを行う。クルーズトレイン「ななつ星in九州」「或る列車」などJR九州の駅舎、車両のデザインは、広く社会の注目を集めた。デザイナーは地域の編集者であると自らの仕事を語る。
赤 松 明 氏
ものつくり大学学長。
専門は木材加工学。木造基礎や家具製作などを通じ、木材加工法を研究している。現在は学長として、次世代のテクノロジスト育成に励む。2023年技能五輪国際大会の愛知県への誘致に向けた検討会の座長をも務めた。
戸 村 亜 紀 氏
クリエイティブディレクター。商業施設のネーミングからロゴデザイン、プロダクト開発など幅広く活躍。都市と農村を繋ぐサービスを生み出す活動など、環境問題や地域産業活性化を通じて次世代の居場所と出番の創出を目指している。
詳細は以下を御覧下さい。